【1人が3人に、そしてまた1人に】

一輪駆動

2022年10月22日 21:43





ルームミラーがオレンジ色に染まる、朝5:00。

早く家を出てきて良かった。

10度を下回ったこの早朝、体温で温まった毛布から出るのには勇気が要った。

街はまだ起き出してはおらず、24時間営業の店舗だけが眩しいくらいの光を放つ。

たまにしか乗らないクルマは、拗ねてアイドリングストップさえもしなくなった。

そろそろバッテリーも交換時期か。
















台風や前線の影響で雨の多い季節。

気温も下がり、暑くも寒くもない頃合いの時期だが、決まって休みは雨。

それにしてもこの10月は布団を干せる日が少なかった。

曇天や暗い雨が続くと、上げようにも気分は上がらない。

どこから飛んできたのか、庭の日陰では苔が青々と育っていた。
















大型トラックにも慣れ余裕が出てくると、俄然連休が欲しくなる。

しかし先の予定を組んで、蓋を開けてみたら雨というのも辛い。

濡れた幕を乾かす暇さえないからだ。

仕事で圏央道を走りながら、一週間後の天気に思いを馳せる。












休みを申請した金曜、土曜とも晴れ予報。

その見通しが立った瞬間、天気より先に大きく心が晴れた。

















R246はかなり混んでいた。

この時間でもこんなに交通量は多かったか。

いや、そんなことはかつて無かった。

知った道だが、グーグルマップに助けを求めてみる。

当初の所要時間より30分早いルートを示してきた。

30分も早いとは、どういうこと⁉︎

案内されたルートは車線1.5本分ほどの狭さで、朝の通勤車がビュンビュンと飛ばす道だった。












360度視界の開けた田園地帯。

左右とは田んぼを区切る様な畦道で接するが、その畦道から幾多のクルマが合流してくる。

朝の混む時間帯、みな少しでも早く目的地へ着く抜け道を探したのだろうな。

田んぼの間を等間隔で数珠繋ぎになっている車列を見て、なんだか不思議な光景に出会った気がした。

まるでフェスの入場ゲートの様な。












近隣住民しか知らないであろう細道を延々と走り座間市を抜けると、R246に戻った。

合流の右手本線では、トラックと乗用車の事故で緊急車輌のサイレンが回っていた。

これが渋滞の理由だったのか。

グーグルマップさん、疑ってごめん。

















野営地近くの店で薪を補充。

広葉樹を一束ちょうだい。

「久しぶりにいいお天気ですね」

ほんと、ここんところ雨続きでね。

「青空が出ると気分が晴れますよね」

自分と同じこと思ってる。

やっぱりみんな晴れを待ち望んでいたんだ。
















少し高台になったところにサーカスを設営。

前回撤収時、からっからに乾燥とまではいかなかったためカビていないか心配だった。

ポールを立ち上げてぐるりと幕面を眺めるが、どうやら杞憂だった様だ。

周りの草地には朝露が光り、靴はたちまちびしょ濡れになった。
























テーブルとイスを出して、山並みに向かいヱビスを開戦、いや開栓。

まっ、開戦でも間違いではないか。

チーズ竹輪と辛子明太子をアテに、雲の流れに目を細める。

転職も無事済み、ステップアップの大型免許も取得し、大型運行にも慣れ、いっときの安定感を得る。

イレギュラーを好む性質だが、こなしたその先の安心感は計り知れない。



















悪友がやってきた。

会うのが半年ぶりのため機関銃の如く会話が始まった。

「長い話になりまっせ」となかなか先を急がせてはくれない。

奥様お手製のおでんを、これも数年ぶりの使用だという鍋で温めた。




















ホクホクのちくわぶを頬張りながら、バイクカスタムの話、仕事の話等々で盛り上がった。

彼はお茶に、こちらは今日11杯目の焼酎割りで。

出汁の効いたおでんは、優しく、そしてバランスの良い、タマラン味わいだった。

10度近辺の野営地にも、熱々のおでんは丁度良かった。

それにしても悪友の営業力には舌を巻く。

話振りで頭の中に絵が描ける、そして笑いがある。

こちらは売り込みをかけられたお得意さんになった気分だった。


「残念ですが、今回は見送りという形で…。次回に向けて鋭意検討させていただきます…w」





















そして川で洗濯…、いや川にキャンプに来たお爺さんは眠くなってしまったのでした…

段々と口数が少なくなり、相槌ばかりとなり、そして野山に居るのに船を漕ぐ。























3:30

顔の冷たさで起きた。

EVAマットの上でゴロリと寝返りをうつと、幕の入口が開けっぱなしだった。

反対側ではスカートがバサバサと音を立てて踊っていた。

そういや昨晩、悪友を送り出した後で、「まだまだ10月、いけるやろ」と一応は冷えについて考えたことを思い出した。
しかし酔っ払いのこと。

全開放で寝てしまったのだ。

温度計は12度。

夜中は強風で、顔の上を12度の風が通り過ぎていたらしい。

あくまでも想像ではあるが。















一服して幕を出ると、空は濃いグレー。

撮影は望めぬと諦めたと同時に腹がクーッと一鳴きした。

昨晩、あれほどまでにおでんに舌鼓を打ち、満腹と満足で寝に入ったというのに。

自分の燃費の悪さとエンゲル係数の高さに辟易する。

昨晩の夕飯用で買ってあり残っていたローソンホルモン鍋、トンカツ弁当を朝から、それも5時から喰らう。



やはり酒のつまみは晩酌のお供に。

弁当は昼の空きっ腹に。



当たり前のことをしみじみと噛み締めた。























焚き火を堪能していると、昨晩帰った悪友がまたサイトへ来訪。

YAMAHA Grand Majesty250のカスタムポイントを実機を触りながら話す。

凝り性やこだわりポイントがお互いに結び付くと話は止まらない。















珈琲を淹れてくれるというので眺めていたら、モンカフェみたいな、カップを渡してのせる四角いフィルターに、自宅からの珈琲粉を匙で掬って入れていた。

大変だったろうなあ…、自宅でモンカフェの中身の粉を出してフィルターだけ持ってきたんか…と思い聞くと、


「こんなん売ってるんですゼ」と、


Kaldiの空フィルターの袋を見せてくれた。

自宅でこじって粉を出している姿を想像していたものだから大笑い。

ヲッサンは新しいモノに疎いな。

だが珈琲は間違いなく旨かった。


















酷使を重ねたポコグリルは、天板のヤレで地面へ落ち、ボットングリルとなってしまった。

思えばこの子とも何度旅をしたことか。

長野、静岡、山梨、神奈川、群馬、福島、栃木、宮城、山形、秋田、岩手…。

道具を使い込み、手入れをして慈しむ。

命は無いのに、寿命を迎えた焚火台を前にいくばくかの寂しさが過ぎる。























遠くからエキゾーストノートが響くと思ったら、ゴールドがポイントポイントに散りばめられたHONDA Gromが視界に入った。

もしやあのGromはK君のでは⁉︎

やはりこの野営地で出会ったK君だった。

イスを持参し、2人が3人になった。

近況やらバイクやらキャンプやら、また様々なことを話し楽しんだ。




















悪友にしても、こちらのK君にしても、とにかく話が上手い。

この2人と話していると、頭の中でイメージした世界での共感や共通点を得られるため、とても面白い。










温泉に詳しいK君から情報を得られたので帰り道の途中の温泉に寄って帰ろう。

秋田の友とのキャンプ後もそうだったが、3人が1人となって、帰り道は寂寥感でいっぱいとなってしまった。

これでキャンプが終わってしまう寂しさなのか…。

友と別れる寂しさなのか…。










ソロもいいし、デュオやコラボもまた楽しい。

キャンプを通しての繋がりに感謝して、涙を拭いてw前を向くとしよう。
























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