【決まりきった殻から抜け出して】-21章-

一輪駆動

2018年12月19日 07:19

「涼介くんは、どこに張ってるのかな」

「ずっと下流なんですけど」

「それで釣り上がって来たという訳か。ここではあまり人とは会わないが、この谷を遡上した者同士、せっかくの縁だ。型はそれほどでも無いが、試してみるかね。面倒で無ければそこの砂州に幕営すればいい。涼介くんの幕は張れそうかな」

思わず二つ返事で答えた。

「いいんですか。邪魔じゃないですか。それなら荷物取って来ます」








涼介は思わぬ出会い、誘いにドキドキが止まらなかった。

獲物が取れず、あれだけふさぎ込んでいた気持ちがスーッと晴れた気がした。

転ばぬ様に足早に幕営地へ戻り、さっき設営したばかりのバップをまた急ぎ撤収しパックに詰めた。

カリマーが来た時より嵩張るのは何でだ。

バイクは心配だが、誰もが入ってくる山ではない事を思い起こし置いていくことにした。













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