【野営譚 〜エコバッグ&ゴミ箱を添えて〜】

一輪駆動

2021年05月04日 07:02













橋に差し掛かると、自分の目を疑った。

8:30の開場を1時間超前にした6:55。

車列、そして車列。

数えてみると、28台。

先頭車の前には看板。

「10時のチェックアウト後に、空きがあれば入場できます」

ホームはこんな状況だった。




















最後尾に並んでもいいのだが、順番が回ってきた時に入場不可の可能性もある。

それが昼頃だとしたら、もう行き場はなくなる。

UターンをかましてR413から林道へハンドルを切った。

いつもはクルマが殆ど通らないその1車線の林道も、すれ違いに気を遣うほど。



















野営だな、今日は。

トランクには水もある。

あそこにするか、はたまたそちらにするか。

若葉のトンネルをくぐり抜けながら第一候補地に到達。

しかしその林道への入口には車止めが渡されていた。

災害復旧工事とあり、土を盛ったダンプが入っていく。




















あの野営地ならば、渓へ向けてこんな風に張って、と設営イメージは出来ていたのに。

取らぬ狸の皮算用。

それならばと第二候補地へと向かう。

同じ渓の下流側。














同じ轍は踏まぬと、カメラだけを持って下見を行った。

広い河原には黒のDoDワンポールを張った若者グループ。























反対側の林間も隈なく営地を探す。

ハンモックを吊りたいのだ。





















朝の8時では地面まで陽は届かない。

暗い雰囲気に、少し躊躇いの気持ちが生じていた。

よし、ここにしよう!とはどうにもならないのだ。

しかしこの砂防堰堤の上流域は、足元の土をパラパラと落としながら降るかなりの傾斜。

止む無し。

ここで、いいか。























クルマへ戻り、さてバッグパックはどこだ…⁉︎

広くもない車内で、いくら探しても見つからない。

んっ、前回降ろしてそのままか…⁉︎

まずい、バッグパック無しで野営は厳しい。

野営さえも諦めなくてはダメか…。







シーズンオフでアルパカストーブも降ろしたので、アルパカバッグは使えない。

ビニール袋に道具を詰めて、何回も往復するか…

日常の仕事で筋肉痛の身体にそれはキツい。







あったあった、キャンプ買い出し用のエコバッグが。

でもハンモック、アンダーブラケット、タープを入れたらいっぱいだ。



















他にないか、入れ物になるものは?

これはどうだ⁉︎

ゴミ箱として使っているワットノットの手提げ。

こちらに道具類を移し、エコバッグには食材等を入れて運ぼう。

両手に大きなバッグを提げて渓へ降りていく。

まるでコストコ帰りのお父さん。



















時刻は9:30を過ぎ、深い森にも陽が入ってきた。

下見時には、鬱蒼としていてどこか惹かれなかった地が、陽の角度が変わってからは木漏れ日劇場へと様変わりしていた。

横に渓が走り、ハンモックポイントとなる樹々も多い。

いいぞ、この雰囲気。

勝手なヲッサン。














5m間隔の樹を見つけ、ハンモックに乗った時の眺望も考え、リッジラインを渡す。

昼頃、一時雨の予報もあるため、風対策としてタープは低めに張った。























3×3タープのカイト張り。

イスとしても使うため、同じくハンモックも低めに。

そして足元にはエコバッグとゴミ箱バッグ。
























さて始めるか。

ヱビスを売っていないコンビニがあるとは。

ラストのコンビニでの買い出しだったため、今日は黒ラベル。



















プシュッ!

グビグビ、ゴクリ、ゴクンゴクン…

身体を動かした後のビールは旨い。

は〜、生き返るわ。




















アテはチーカマと韓国海苔。

読み物は、Number誌「松山英樹マスターズ優勝特集」

日本人初、アジア人初の快挙。

抜きん出た「個」が「チーム松山」の声に耳を傾けて、コース上でのミスショットにも柔和な笑顔に繋がった、とあった。

この域でのメンタルコントロールは想像を絶する。

ただただ素晴らしい。



















下見の時だけカメラを持って降りた。

野営道具以外に2kgの荷物が増えるのはキツい。

だから幕営以降は、全てスマホカメラ。

どこにもピントが合い過ぎて、撮る楽しみを見出すのが難しい。

撮影散歩は諦め、せせらぎを背にしてハンモックに横たわる。

地面には焼酎割りのタンブラー。

寝ながらにして左手を伸ばせば、そこには酒。

大沢在昌著「新宿鮫 暗躍領域」をむさぼり読みながら、チーカマを齧り、焼酎割りで流し込む。

せせらぎの水が砕ける音をベースに、そこへ鳥や蛙の声が被さる。

それ以外に音は無し。


















木漏れ日が無くなったと思った途端、ポツポツと来た。

遠くのバーベキューファミリーは泡を食った様子で片付けをしていた。

野営の天敵、山ビルはまだ姿を見せない。

鹿の証拠はあったが。




















流石に腹が減り、15時におやつならぬ海苔弁当を喰らう。

ちくわの天ぷらは、海苔弁当には必須なのだろうか。

自分にとり、このコラボは値千金。



















朝が早い仕事のため、夜は21時に寝る習慣がついた。

まだ18時だが、酒の勢いもあってかひたすら眠い。

シュラフに入ろう。




















夜中の見回り。

見上げれば満天の星。

撮れないと思い込んでいて、スマホを向ける事はしなかった。






















「路上駐車をしている運転手さん、至急クルマを動かしてください!」

最後のタープを畳んでいる時に、遠くから聞こえたこのアナウンス。

慌ててタープを糸巻きの様にくるくると巻き、山道を駆け登りクルマに戻った。

昨日は一台だったのに、今朝は道幅が広くなっているところ以外にも車列。

これがあのアナウンスの理由か。

野営の最後は動悸と息切れで終了。




また少し自然と近づけただろうか。



























宣言が出る前の野営記事です。


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