イトしいひと、イトしい野やま…
最近になってアマプラに加入し、ロードオブザリングを見返したので、ついついゴラム口調になってしまう…
毎週月曜に出るシフトをよくよく見ると、火曜は夜中から昼終わり、そして水曜は休み、それで木曜は昼からの仕事。
こんなチャンスは滅多にない。
ならば出かけるしかないでしょう、野山に。
8月頭に鮫洲にて大型の免許を交付された。
業務をこなしながら並行しての教習所通い。
予約が取れずに何度もキャンセル待ちをして、3時間待っても良き結果が得られずバイクで自宅へ戻る日々が続いた。
昨年10月以来に、野遊びの支度を始める。
あらー、クルマにガソリン入ってない…
そもそもバッテリー上がってエンジンかからないのでは⁉︎
燃料ついでにガソリンバーナーのタンクも空に近い…
あっ、紙パックの焼酎もなし…
LEDランタンの充電もやたらと長くかかる…
一眼レフのバッテリーもエンプティ…
いかんいかん、キンドルも充電しておかないと…
心は野への渇望で満タンだが、道具類はすべてからっきし。
準備リストなぞ無いので、野での夕から朝への生活を思い出しながら、場面場面で必要な物を準備し、電力を必要とする物は早く満充電になるものからコンセントに繋いでいく。
頭の中は忙しいし、手足もフル稼働。
でもたまらなくタマランのだ。
昼からの出撃では、時間を有意義に使いたい。
贅沢だが首都高K7→東名高速→圏央道を使い、時間を買うとする。
普段も業務で東名を使うが、午後いちには大和トンネル渋滞は4キロ程度に減っている。
しかし今日という今日に限って、海老名ー港北PA16キロ渋滞…。
どうして…。
全長12mの大型トラックに比べ、ハッスル君は3.4mと1/4の大きさなのに、久しぶりに乗ると視界が狭くて怖い。
不思議な感覚だが、着座位置の高さと4つのミラー、バックモニターが成せる技だろう。
先輩からは出来るだけサイドミラーで後方を確認する様に教えを受けた。
それと降車しての目視。
新しいことを始めると、今まで知らなかった世界を覗くことが出来る。
それがとても嬉しい。
野営地はガラガラだった。
気温は30℃。
湿度が高く、コンテナを下ろしただけで汗が噴き出てきた。
早速の水分補給と参りますか。
ハンモックを吊って、一番搾り。
タープを張って、黒ラベル。
あ〜あ、腰を落ち着けた時には、ビールの在庫ゼロ。
ハンモックをイス代わりに、コンテナをテーブル代わりに。
随分とものぐさになったものだ。
タンブラーに氷を入れるためにグロウラーの蓋を開けると、上部3つくらいの氷が塊に。
ラムネ瓶の様に内側からしっかりと蓋をされてしまった。
仕方なく常温で焼酎をいただく。
ぬるい焼酎はより暑さを感じる。
アテはカニ風味かまぼこと明太子。
かまぼこを一列食べたら、下にもう一列あった。
なんだか得した気分。
夕方まではモーリス・ルブランの奇岩城、暗くなってからは沢木耕太郎の深夜特急を貪り読む。
特に後者、貧乏バックパッカーが訪れる、街の匂い、人熱、食べ物の味、人間模様…、それらが手に取る様に伝わってくる。
薪は準備したが、暑過ぎる。
火をつける勇気が出ない。
涼しさが増した20時。
焚き火熱よりも睡魔が勝り、ハンモックにもつれる様に飛び込んだ。
ソロを始めてから、焚き火の無いキャンプは初めてかもしれない。
早い時間にハンモックに入ってしまったものだから、起床は安定の4時。
どうやら蝉より早起き出来た様だ。
朝の一杯の水とタバコで目を覚ましていると、やはり30分後、ミンミンゼミの一匹が鳴き始めた。
負けじとアブラゼミが唱和する。
そこに乗るようにクマゼミとツクツクホウシがメロディを奏でていた。
やや、一際哀愁を帯びたメロディを紡ぐのは、ヒグラシ。
圧倒されるほどの音量と重なり合う旋律は、バリ島のケチャを思い起こさせ、精神世界の真っ只中にいる様だった。
すると無性にプリンが食べたくなり、クーラーから取り出した。
糖分を摂ったら満足して、精神世界の話は吹っ飛んでいった。
カップヌードルカレー大と珈琲3杯は忘れずに。
サイトに落ちた爪楊枝やネギを拾い、痕跡は残さず撤収。
帰路は往きの半分の時間で戻れた。
駐車場にクルマを入れ、荷物を玄関に運びこんでいると、手に針が刺さった様なチクリとした痛みが。
キーホルダーの輪っかがまた緩んだか、と思って掌を見ると、そこには緑の物体。
慌てて電気をつけてみると、それは体長13cmはあろうかと思われるカマキリだった。