12月30日をもって全ての業務が終了した。
合わせて10年勤めた仕事も辞めた。
さてすべては白紙になり、何をしても、何を始めても良いフリーな立場になった。
深紅のビートルは、ここ野営地の一等地にニーモ・ヘキサライトとともにあった。
大晦日の朝、7時。
幕内は静まっていた。
H氏はまだお休みの様である。
声は後ほどかけよう。
列島を大寒波が襲った昨晩。
幕が音を立てて揺らぐほどの状態であったことであろう。
ハンモックも張れて、サーカスも張れる場所は空いているか。
果たして目論んでいた所は、今まさに撤収作業をしてらっしゃる方が見えた。
お声をかけておき、カメラ片手に大晦日の風景を撮り歩く。
設営が終わったら、サンドベージュ・アルパカの修理。
塗り替えて組み上げたら、目一杯ダイヤルを時計回り方向に捻っても中央の燃焼筒が赤く染まらなくなったのだ。
芯の寿命にしては早すぎる。
また分解して、芯の取り付け位置を少し上げてみた。
灯油が勿体ないので、試運転は夜とする。
大晦日とはいえ、人の出は多い。
人の事を言えた義理ではないが。
見渡すと特に軍幕さんの率が高い。
ツールーム幕等の大きく高い景色とは違い、低く野に這いつくばる様な光景が面白かった。
都市部ではなく、郊外の町に来た感覚。
夜になりアルパカに火を入れてみた。
案の定、燃焼筒も真っ赤になり、暖かさも戻ってきた。
2020年が終わろうとしている。
武漢ウィルスに翻弄された一年だった。
真夏の額から汗が落ちる時もマスクを着用。
緊急事態宣言が出て野へ出られなくなった。
その頃、英太と奈緒の物語を書き始めたのだったな。
まだ発症者が日に80人くらいだった。
それがGo toが終わりを告げる頃には、1,000人に達しようとしていた。
デニム生地のオーバーオールに身を包んだH氏が来訪。
黒縁のメガネをかけていた。
いつものヤツはどこかに落としてしまったらしい。
いつもの肉屋が閉まっているため、ちょっと遠出をして別の肉屋から仕入れた豚ホルモン5種1kgと生酒を片手に。
今夜は月がキレイだ。
極上新鮮豚ホルモンは似非ファイアボックスの炭火でいただこう。
と言っても、恥ずかしながらこれだけ野遊びをしていても炭を扱った事が無い。
ホムセンで買った箱から、火バサミで炭を焚き火台にくべてみる。
ファイアボックスに移す頃合いが分からず、その炭は焚き火台の上で生涯を終えた。
次に一部が白く赤くなったところで焚き火台に放り込む。
ところが手をかざしてもほんのり温かいくらい。
これではホルモンは焼けない。
もう少し長めに1/3くらいが白くなったもので試してみる。
チンチンと音がするので、いけるだろう。
そんな感じの炭をファイアボックスに5〜6個積み上げると、焔が出てきた。
コレコレ、この炭火が欲しかったんだ。
ただ今、0℃。
炭火の焔は、焚き火の赤や青と違い、黄色味の強いものだった。
さあ始めよう、酒池肉林の世界を。
と言っても、50過ぎの漢2人でだが。
ナンコツはコリコリ、シロは外カリッ中フワッ、レバーは外カリッ中クニュ、ガツは普段食べている肉に近い。
以前焚き火で焼いたホルモンとはまったくもって違う味。
こんなホルモン、食ったことが無い。
前は外カリッ、中クニだったし、やはり煤が付いていたのだろう。
炭火で焼いたホルモンは、肉の旨味だけをしっかりと味わえた気がした。
いずれも料理下手な主観であるから、ほどほどに。
甘い呑み口の生酒、そして純米酒の海でたらふく泳ぎ、H氏も船を漕ぎ出した頃合いでお開き。
アルパカを消そうとダイヤルを回しても鎮火せず。
どうやら芯を上につけ過ぎた様だ。
明日、また調整しよう。
昨晩は宴の後、21時頃の記憶も定かで無いまま、落ちていた。
LEDランタンをつけ時計を見ると4:57。
目の前のバイクキャンパーは既に起きていて、焚き火を始めようというところ。
東の空は雲一つなくうっすらと明るくなっていた。
アルパカの上でコーヒー用の湯を沸かし、初日の出を待つ。
今朝は皆さんの出足も早い。
手にはスマホを掲げて、片手はポケットに。
H氏の温度計はマイナス6度を指していた。
ここ野営地の東方向は一面のススキ野原。
2021年の陽が顔を出した。
自分が思うより陽の進みは早く、初日の出がまん丸の姿を見せると、一面のススキは新しい陽を浴びてそこら中が輝き出した。
川面からは靄が立ち上り、それらも黄金色に照り返していた。
この景観は一生忘れる事は無いだろう。
謹賀新年
明けましておめでとうございます
本年もどうぞよろしくお願い致します
コーヒーをもう一度沸かして、ホットサンドを作ろう。
6枚切りの食パンにしておけばいいのに、2日分の朝食を考えて8枚切りにしてしまった。
そのため枠にプレスされず、ホット食パンとなってしまった。
ツナ、塩胡椒した目玉焼き、マヨネーズを載せてホットサンドメーカーで焦げない様ひっくり返しては中を覗く。
サクり、ガブり、ジュルり、ぺろり。
間違いのない旨さ。
バイクキャンパーの後を襲う様に、黒いデリカがやってきた。
おや、このクルマはもしやT氏やもしれない。
運転席からはジェルでオールバックに固めたT氏がニヤリ。
この営地は誰かしら知り合いが来ているため、ソロの時間を楽しむも良し、お喋りに興ずるも良し。
ソロキャンパーの社交場の感を呈してきた。
さてと今夜はT氏のダッチアーミーテント、東独軍のタープ、ロシア軍のトグルタイプの風除けを張ったフル装備のサイトで、またまた酒池肉林の渦中に飛び込むとするか。