緊急事態宣言も3月まで延長された今。
マスコミはこぞって観測史上最大の寒波を煽る。
蓋を開けてみれば、いつもと変わらぬ冬景色。
野遊びをしていると分かる。
冬は寒いという当たり前の事が。
ブレーキレバーはキンキンに冷え、指先の感覚を麻痺させた。
マスクを通った口からの暖気は、一瞬にしてヘルメットのシールドを曇らせ視界を奪う。
キャンプをしていても、風がある日は体感気温はグッと下がり、気温の数値だけで判断してはいけない事を知った。
穏やかで無風時の昼下がり。
センタースタンドを立て、シートの上で感じ取る。
2月中旬なのかと疑う陽気を。
野山遊びが叶わない今、近隣の自然公園へ春の息吹を探しに撮影散歩に繰り出すとする。
バッグから取り出したD7500からレンズを外し、ブロアで埃を払いSigmaArt50-100mmf/1.8をカチッと音がするまで回し込む。
今日は陽射しが強いので花形フードも前面に被せる。
トップボックスからそっとバッグを出す。
レンズを含め2kg弱と手にずっしりとくるカメラを携え、自然公園の左手から探ってみる。
バッテリーを充電しておくのを忘れたが、残量は2/3ある。
いけるだろう。
下草が顔を出していた。
地面に青々とした緑が増えてくると、春の始まりを感じる。
気温は最高で6度とまだ肌寒いが、確実に季節は動き始めている。
湿度が抜け切らない木陰では、脈々と苔が息づいていた。
苔が潰れぬ様に、でも木漏れ日も出したい。
相反する欲求を満たすべく、シャッタースピードと絞りを調整して何度もシャッターを切った。
面積29万7000平方メートルと歩き回るには楽しく、かつ起伏に富んでいるために飽きない。
常緑樹も多いために、差し込む光と樹々の葉で翳る部分とのバランスが面白い。
落葉樹の多い地では、地面にあまり影が出ないのだ。
明る過ぎる被写体も暗過ぎるのも、あまり触手が動かない。
光と影なのかな、自分の撮影の醍醐味は。
桜の樹種が多く、桜100選にも名乗りを挙げる公園。
一本いっぽんの樹には、樹種を示すカードが下がっていた。
寒桜から開花が始まり、横浜緋桜、右近桜、染井吉野と78品種を堪能出来る。
ぜいぜい言いながら坂を登ると、一本の樹に一輪の花のみが咲いた寒桜が目に留まった。
慌てん坊なのだろうか、先頭に立つタイプなのか。
続けて5分咲きの艶やかなものも見つけた。
気温の変化を敏感に感じ取っているのか。
不思議な自然。
大きな滑り台にはこどもたちの嬌声が飛び交っていた。
元気な声を聴くと安心する。
思いっきり身体を動かしたい彼らには、この公園があって良かった。
締めくくりは木陰に佇む朱の鳥居。
手を合わせて、撮影散歩を終わりとした。
冬は7割残り、残りは春が息づいていた。