【野と珈琲】

一輪駆動

2021年07月16日 05:40






キャプテンスタッグのミニテーブルに置いたSOTOのバーナー。

カセットガスを捻じ込んで、ジッポの火を寄せて点火。

バーナーの脚はよくテーブルの溝を噛む。

その度に湯を沸かそうと上に載せたシェラカップの心配をしていた。

チェアワンとテーブルの高さがミスマッチで、ずっと屈んだ格好。














周囲は高さ10mくらいまで枝打ちをされた杉林。

ここでは鳥の声はかなり頭上から届いてくる。

テーブルを置いた右側からは、岩を砕く流れの音が聞こえる。

バイクの上のバッグから、一本のスティックコーヒーを持ってきた。














プクプクと泡立って湯が沸いた。

火を止めてスティックコーヒーの口を開けた。

シェラの泡の上で投入したコーヒー粉は踊っていた。

空になったスティックを半分に折り、シェラの中をかき混ぜた。

持ち手にグローブが必要なほどに、シェラカップの縁はやたらと熱かった。

少し冷めるまで、タバコでも吸って待つか。

















針金細工の様なドリッパーを縦に起こし、チタンマグの上に載せた。

タープから一歩出ると、そこは灼熱の陽射し。

日陰ですら、風が空気を動かさないと汗が滲む。

フィルターには二杯分より多めにコーヒー粉を入れた。

山クッカーで沸かした湯を、角を利用して出来るだけ細めに注ぐ。

粉を膨らます様に。

しかし専用のケトルと違い、太く注いでしまう事も度々。















氷を山の様に盛ったマグに、濃い目に抽出したコーヒーを注ぐ。

みるみる氷は溶けて、熱々のコーヒーを冷ましていく。

最後の一滴まで入れ終わったら、新たに氷を盛る。

額から流れる汗を拭きながら、程よい冷たさのアイスコーヒーを一気に喉に流し込む。

















本体を二つに割ると、中からはこれも二つ折りになって収納されたハンドルが姿を現した。

それを上部のポッチに嵌め込み回してみる。

ミルを手に入れた日。

そして今日は粉ではなく、珈琲豆を用意してきた。

木のメジャーが欲しいが、今のところはプラのもの。

フレンチプレスで抽出するため、挽き方は中挽きを選んだ。

下部のダイヤルを時計方向にカチカチと回し、この辺りだろうと検討をつけた。















上蓋を外して、メジャーで正確に三杯分の豆をカタカタと流し込む。

ハンドルを回し始めると、ギヤが豆を噛んでいる事を右手に伝えてくる。

段々と軽くなり、挽きは終了。














焚き火の上で煤を纏わせながら、スタンレークック&ブリューは懸命に湯を沸かしている。

沸いた時のポコポコと鳴る音が合図。

焚き火から下ろし、蓋を開けて香る珈琲豆をサラサラ。

その上から蒸らす様に、中蓋をそっと下ろしていく。

慌てずにセブンスターで一服。

一本吸い終わる頃合いで中蓋をプレス。

その瞬間、注ぎ口からは猛烈にいい香りが噴出する。

マグに注いだコーヒー表面には、油分の幕が層を成していた。

ペーパーフィルターを通して、それら油分を濾過した味とは大きく異なり、野性味溢れる珈琲だった。




















スティックコーヒー、珈琲粉、珈琲豆ときて、今度は生豆から焙煎をしてみたくなった。

ちょっとした遠出の散歩で見つけた珈琲豆屋さん。

そこのオーナーから焙煎ノウハウを教わった。

1ハゼ、2ハゼ、粗挽き、中挽き、細挽き、シティロースト、フレンチロースト等の言葉と意味とやり方を教えてもらったのもこの時。















焙煎器を用意しようとあちこち覗くが、作りはシンプルなため自作出来るのではと考えた。

ホームセンターでシンクの網と針金を買い、組み合わせて作ってみた。

使わない時はすべてをバラして小さくなる様に。




















目の前の渓には、黄色の紅葉が数葉流れていく。

オーナーおススメのクレオパトラという名称の生豆を自家製焙煎器に入れ、ガソリンバーナーの炎の上で懸命に振り続ける。

パチパチと派手目な音が出始める。

これが1ハゼ。

攪拌を続けながら煎ると、先ほどよりもかわいらしいプチプチと音がする。

これが2ハゼ。

自分の好みでは、この瞬間だ。





















すぐに火から下ろして、焙煎器ごと大きく振り、熱々の豆を冷ます。

焙煎器自体が小さ過ぎたのか、攪拌も冷却もなかなか効果を表さなかった。























翌朝、森が黄と紅に彩られた中で、ミルに焼きムラがいっぱいの珈琲豆を掬って入れる。

お気に入りのマグで、フーフーと冷ましながらいただく焙煎珈琲。

これほどまでの香りは経験したことが無かった。

やってみるものである。

いつものセブンスターさえも、一味変わった感があった。






























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