風まかせのハンモッカー

手芸屋さんのアウェイ感は、50過ぎのヲッサンにはなかなかハードルが高い。

分からないので質問でもしようもんなら、そんな事も知らんのか…、といった冷やかな視線を投げかけてくる。







女性が98%のこの手芸館でたまに見かける男性は、ベレー帽を小粋に纏ったデザイン関係者と思しき若者。

直火にあたりながらバーボンを浴びる様に呑み、セブンスターをくゆらす様な、どちらかと言えば土や泥が似合う男はこの店にはいないのだ。











冬キャンプへ出向くにあたり、焚き火の恩恵を全身に浴びるべく、“JimMack”をサイトに加えたいとかねがね考えていた。

幕内でストーブに当たる時間までは、出来るだけ外で焚き火の焔を眺めていたい。

しかしマイナス気温ともなれば、寒いより冷たいといった感覚麻痺の状態になる。

焚き火からは温かさをもらえるが、より手前に熱が来てくれれば、と思ったのがまず一つ目の理由。

もう一つは、何かを作りたい衝動に駆られて、だ。












似非軍幕に合うのは何だろう。

素材は帆布がいい。



色は…
オリーブドラブ…
幕と同じってのもなあ



ブラウン…
そこだけ浮くかなあ



明るいベージュ
幕もベージュ系ならこれもアリだが










生地売り場の帆布コーナーは在庫の種類が少なく、望むカラーは無し。

倉敷帆布等のネット注文の方が選べる様だ。

次に何か作りたくなった時は、ネットを覗いてみるか。

帆布を使う事は諦め、次に厚いデニム生地コーナーへ。









10ozでは触った感じ、薄い。

であれば14ozの中で、カラーを品定め。

オリーブドラブは何だかテカテカしている。

これは無いな。

パタンパタンと反物形式で展示してある生地をずらしては引っ張り出してを繰り返す。









ふと目に留まった、ディープベージュ。

もうカラーネームからしてタマラン。

色合いも濃いめのベージュであり、幕体と差別化しても同系色。

これにしよう。















設計図をポケットから出して、幅1,100で長さはいかほど必要かを足し算していく。

2,300あれば収納袋も作れるな。

その生地はキープとしておき、小物類を仕入れるべく三階へ向かう。










必要なもの

生地以外では、
・太い糸
・太い糸を縫える太い針
・グロメット
・アクリルテープ








太い糸とは⁉︎
「ボタンツケイトですかねー」




太い針は⁉︎
「ホサシバリですかねー」




あの、指にはめて針を押すリングみたいなのは⁉︎
「あー、ユビヌキですね。ソウメのものがありますよー」




グロメットをかくかくしかじかでバンドみたいのに留めたいのだが⁉︎
「アクリルベルトですかねー。末端処理しないとほつれますよ」






なかなかつかまえられない店員に聞いたのは、これが精一杯だった。

知らない単語ばかりで、エジプトの裏通りにいる感覚。

一つひとつのアドバイスを噛み締める様に反芻しながら、売り場を彷徨う。










針は、ってーと、ホサシバリって言ってたな。

帆差針、これか。

糸はすぐ分かった。

おうおう、アクリルベルトもあったぞ。

何だ、指ぬきの総目って事ね。

聞いた時は片仮名だったものが、漢字になり意味が出てくる。











小物類を会計して、メインの生地売り場へ降りる。

後悔しない様にもう一度見て回ったが、やはりディープベージュ以上のものは琴線に引っかからない。













帰宅して逸る気持ちをまず抑える。

いつも慌ててしくじるからだ。

しかしいつもは根元まで吸うタバコも半分で揉み消してしまった。














さあてまずはラフ線を描こう。

ほつれ防止と強度アップのために、３回折り返す。

そのために本体より大きめに余分を考えておく。













ラフ線が描けたら、裁ちばさみでジコジコと切っていく。













生地が切れたら末端処理を行う。

折り返してアイロンをかけ、マチ針で留めておく。












ローガンズにとっての鬼門、糸通しだ。

親父が何か近場の作業をする際に、メガネを額にずらしていたのを思い出した。

今は自分が同じ事をしている。












ステッチもあえて見せるべく糸の色を選んだが、あまり効果が無い。

次回への反省点だ。















しかし手縫いはキツい。

ミシンのありがたみを身をもって知った。

根気の要る作業だが、時折息を抜きながら、愉しめる範囲で縫い付けていく。














ポールは似非軍幕のキャノピーポールを流用。

軍幕本体ポールが1,100、キャノピーポールが1,300。

200の差では雨が流れてくれないのだ。

軍幕用にはFieldoorの1,500を使うので、余ったキャノピーポールをJimMack用に転用。








４本継1,300なので、１本あたり325の全長。

一番上と一番下を使って、650の２本継とする。

ショックコードを切ってバラし、上と下だけをショックコードで再度繋ぐ。



















一番難儀したのが、ポールスリーブ。

スーッと入って、遊ばない頃合い。

文系のため計算は出来ないので、現物合わせ。

いや、いつでも現物合わせだな。

風まかせだし。

円形状は難しい。















ペグを差すグロメットはアクリルベルトにカッターで小さな穴を開け、ハトメを打ち込む。

zippoでベルトの末端処理をしたら、焦がしてしまった。

まっ、それも味。


















遊ぼ！と作業をことごとく邪魔していたパピ子は、諦めたのか毛づくろいをしてご就寝。

ごめんよ、ヲッサンやり始めると止まらないんだ。













アクリルベルトを取り付ける場所は、隅のため生地は６層、その上にベルトだもんだから、流石の帆差針も通り難い。

総目指ぬきはこういうところで非常に役に立った。

無ければ、指の腹に穴を開けていただろう。

keenを修理した時の様に。










余った生地で収納袋も縫う。

もう縫う事にも飽きたヲッサンは幅広のなみ縫いでお茶を濁す。













グロメット付きのアクリルベルトを５ヶ所取り付けて完成。
















今週末のキャンプで実戦投入。

物作りは楽しい！