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2020年08月16日

第二章【研ぎすます!】25





(キャンプエッセイです。登場人物、場所、ギアはすべてフィクションです)






sanzoku mountainの幾何学的に紋様の切り抜かれた焚き火台に、文化焚き付けを丸ごと三本放り込んだケンは、雑然と薪を放り込んでいた。

まるでキャンプファイアーの如く火の手は上がる。

こんなに次々と燃やしてたら、薪代、大変だろうにな。

私だって着火剤を使う時は、一本を1/3に折って使うのに。

まあ、色んなスタイルがあること…。

でも模様から覗く火の粉はキレイだった。













奈緒はミニから小袋を持ってきた。

その中には革砥と青棒、そして12,000番の白コンパウンドが入っていた。

オピネルの刃を出しロックを回す。

革砥にオリーブオイルを垂らし、砂を払った小枝で全面に伸ばす。

青棒をその上から満遍なく擦り付けていく。

オピネルにマイクロベベルをつける様にして、角度を均等に維持し刃を舐める。

それを数回行った後、裏面のコンパウンドの上を滑らす。

同じ要領で、薪バッグに差してあるモーラを鞘から抜き出し、青、白と舐める。

足元の枝を拾い上げ、薄い角度で枝にモーラを噛ませると、すーっと表皮がめくれクルクルと回り出す。

うん、切れる。

その一部始終を見ていたケンは、

「ねえ、奈緒さんっていったい何者なの⁉︎」

「何者ってw ただのグラフィックデザイナーだよ」













サイト横の水量の多い流れは、時折り2人の会話を遮るほどだった。

奈緒から見ていても、ケンの酒の呑み方は心配になるほどだった。

缶チューハイ関係は全て飲み干して、今度はスコッチをロックで煽っていた。

緊張もあるのかな。

奈緒はピコグリルにタークのフライパンを載せ、引いた油が煙を立てた頃に潰したニンニクを放り込み、頃合いで肉を滑らせた。

ジュッ、ジュー…

脂の焼ける音と、香ばしい肉の焼ける匂いと。

無性にお酒が呑みたくなった。

クーラーからコロナビールを取り出すと、ケンが100円ライターをビンの口に噛ませてシュポッと開けてくれた。

超レアの焼き加減でフライパンごと肉を下ろし、先に火を通したクレソンとじゃが芋を添えてSOTOのフィールドホッパーに置いた。

まだ鉄鍋の上ではジュージューと肉が音を立てていた。

その上から最近一押しの宮のタレをかけた。

辺り一面に、ニンニクと玉ねぎをすり下ろした、なんとも言えぬ良い香りが漂った。













ケンくんは料理をしないとみえて、レトルトのカレーを温めていた。

「いいなあ、奈緒ちゃんは料理が出来て」

「そんなあ、焼いただけだよ」

奈緒は砥いだオピネルを肉の表面に当てるとサッと手前に引いた。

筋の多いお手頃な肉であったが、砥いだオピネルは筋さえもいとも簡単に割いていった。

「うん、砥ぐとやっぱり気持ちいい切れ具合」

「えっ、ちょっと俺にも切らせて」

ケンはオピネルを受け取ると、タークの上の肉に切っ先をあてがい、引いてみた。

「うおっほ!切れる、切れる!切れると言うか、肉が勝手に裂けていく感じ。砥ぐとこんなに切れるもんなの⁉︎」

「私もね、みんなが革砥がいいいいって言うから半信半疑でやってみたの。そしたら驚き!こんなに違うの⁉︎って」

「だってさ、砥石でやっただけでも違うって聞くのに、この刃の入り方は別次元だよ」

キャンプに来ると肉を食べたくなる。

断面を見ると、火が通って焦げ目もついている外側以外は、桃色のレア部分がふんだんにある焼き加減だった。














今夜は赤ワインをいただいている。

チリ産のお得な銘柄。

妙な緊張感の漂う空気を変えたくて、奈緒は言い出した。

「ケンくん、さっきのオジ様のところにお邪魔してみない?」

「え〜、俺、焚き火に火をつけたばっかりだよ」

「そっかー、なんか気になるんだよね、あの人」

「奈緒ちゃん、行ってきてもいいよ。俺、焚き火picを上げるからさ。それにコメントの返信も30件くらい溜まっちゃってて。すっごく忙しくなっちゃった」

忙しいと言う割には、とても嬉しそうだった。

「じゃ、ちょっとだけお邪魔してくるね」

奈緒は、ワインのボトルとマグ、それにチョコを持って、真っ暗なブナの森の中を川下の方に歩いて行った。



























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この記事へのコメント
こんばんは!

着火のくだり、二人が対照的なのはわかるけど
奈緒ちゃんが何をやってるか僕には全然わかりません(^^;

僕はフェザースティックはもちろん作ったことないし、
ナイフで小枝を作ったりも面倒でやらなくなりましたし(^^;
杉の枯葉と、木の皮を手で剥いだものが僕の着火剤でして
(最近は固形燃料着火も使ってます)
手間と不便を楽しむのが大人のソロキャンの楽しみ方なのに
僕は面倒臭いが理由で、かなり雑なキャンプをやってるな~
と、改めて思いましたわ(^^;

ところで奈緒ちゃんが向かった、あのオジサン
もしや・・・!(^^
Posted by 八兵衛八兵衛 at 2020年08月16日 21:51
こんばんは(^-^)
文章だけでオピネルの切れ味が
伝わってきます(^^)
奈緒さんの焼いた肉、
食いたいな~(笑)

向かった先に待ち受けるものは…
ワクワクします!
Posted by 羅偉羅偉 at 2020年08月16日 22:11
ケンくんは、酒のペース早いですね。
それに、薪をバンバンいれてますね。
私と同じです。
それに、私もレトルトですし。(笑)

展開的に次回が気になります。
Posted by 山猿山猿 at 2020年08月16日 22:47
おはようございます。

なるほど〜オピネルはこう研ぐのか!というのが分かりました(笑)
キャンプといえば肉ですよね。ただファミリーで行くと肉代だけで財布が空っぽになっちゃうので、変化球で鶏か豚が多いです。
でもピンク色のレアを堪能するなら牛一択ですしね。

ケンくんは酒をガンガン飲んでSNSを駆使してって、人物像は更に明確化してきました。

奈緒さん、向かった先ではどんなお話になりますかね。
Posted by マサカリマサカリ at 2020年08月17日 08:10
こんちゃ(^ ^♪

全然タイプの違う二人だけど
案外合うんじゃないかとも思いつつ
おじさまのことが気になるんですね(笑)

奈緒ちゃんには幸せになって欲しいんだけど、儚い感じがしますね

ナイフを研ぐ描写
どんなハウツー本より参考になりました
皮砥、なにか買って見よう
Posted by shinn.shinn. at 2020年08月17日 13:13
ども。

おじさま、、、
課長と思わせておいて、
慎一郎さんだったりして(^^;
Posted by うち。うち。 at 2020年08月17日 15:04
こんにちは(・ω・)

久々だったので随分更新を見送っていたかなぁと過去にさかのぼって読ませていただきました
そして今回、目の前にまざまざと映し出され香ってくるような美味しそうな肉の描写に、お昼ごはんがまだのいたちはリアルでお腹が鳴ったということをお伝えしておきます(*`・ω・)ゞグー
Posted by いたちいたち at 2020年08月17日 18:04
こんばんは
ひと昔前の自分ならこの物語に出てくる言語を理解出来なかったけど、今なら全て理解出来る。その上で読み進めていける幸せ
そしてとうとうキーマンの所へ行くのですね
次回が楽しみw
Posted by 七私七私 at 2020年08月17日 23:01
八さん
コメントをいただきありがとうございます。

奈緒の着火のやり方はブッシュクラフト系の方がよくやられるものですね。
これはスタイルですから、自分のやりたい様にやればいいんです。
火を起こすまでに手間のかかる儀式を楽しみたい方、それ以外の部分に楽しみを見出している方…

木の皮で…
もしかしたらそれが白樺かもしれませんしね(^^)
キャンプに何を求めるかは千差万別なのと、
こだわりは人それぞれですものね。

バックパック担いで、腰まで川に浸かって、
遡行して、営地に向かう…
そんな事出来る人、やろうと思う人、
数少ないですもん(^^)

ワタクシも文化焚き付けヘビーユーザーでございますよ(^^)

もしや…
もうお分かりですよね(^^)
Posted by 一輪駆動一輪駆動 at 2020年08月18日 06:59
羅偉さん
コメントをいただきありがとうございます。

カカカッ、嬉しいご感想をありがとうございます。
安いスジ入り肉と切れないナイフの組み合わせほど、
キャンパーをイラつかせるものはないと、
経験が申しております(^^)

向かった先には…
アブの襲来に転げ回るオジ様かもしれません(^^)
Posted by 一輪駆動一輪駆動 at 2020年08月18日 07:03
山猿さん
コメントをいただきありがとうございます。

奈緒との2人っきりってのもあったのでしょうか。
緊張を酒で誤魔化す、みたいな(^^)
山猿さんのレトルトは、自分も同じです。
なんたって湯煎大王ですからね(^^)

さて展開はどういたしまひょ(^^)
Posted by 一輪駆動一輪駆動 at 2020年08月18日 07:05
こんにちは。

朝3時から庭仕事をしてぼーっとしています。
夏休み最後の日です。

「着火剤を使う時は、一本を1/3に折って使う」
うん。そうですね。

でも最近、
ファイアーライターズというものにも興味が出ました。
複数形なのがシブい。
買おうかな。

革研、そんなに簡単に切れるようになるんだ…
私は京セラがOEMで出してる
フィスカースのシャープナーで
ごまかしています。
Posted by eco2houseeco2house at 2020年08月18日 12:22
僕の中で「オジ様」は一輪さんなんだよなぁ( *´艸`)

登場しちゃいます?www

ナイフ研ぎは、砥石でなんちゃってしかやったことないので
切れ味いまいちです。
奈緒のこの方法カッチョイイですねぇ~^^
Posted by ササシンササシン at 2020年08月18日 17:30
マサカリさん
コメントをいただきありがとうございます。


聞きっかじりの文章ですので、
それと自分流であること、
ゆめゆめお忘れなき様に(^^)


最近、中が桃色の牛ニク、食べてませんねえ。
レアにしようと思っても、ニクが薄くちゃレアかどうかも分からん!ってね(^^)
もっぱらホルモンですわ。
鶏肉も豚も旨いですわな。


おっ、人物像、見えてきましたか。
嬉しい!
Posted by 一輪駆動一輪駆動 at 2020年08月18日 22:52
shinn.さん
コメントをいただきありがとうございます。

奈緒とケンは両極端ですよね。
ケンは火を高く燃やすのが好きな人だし、
奈緒は小さな火を世話するのが好き。
ケンは設営を3時間くらいかけてsns投稿を第一に考えている。
翻って奈緒は自然の中で暮らす楽しみに重きを置いている。
そんな対極の2人でも淡い気持ちは生まれるのか。

オジ様の続きはアップしましたので、
そちらをどうぞ(^^)

お言葉ありがとうございます。
我流でしかないですが、
今のところこのやり方が一番結果を生んでいるのですよ。
革砥、やってみちゃってください。
違う世界を覗けますよ(^^)
これだけ違っても
Posted by 一輪駆動一輪駆動 at 2020年08月19日 07:15
うち。さん
コメントをいただきありがとうございます。

ハハハッ、そこ持ってきますか⁉︎
上手い!
慎一郎さんの続きも書かないと…(^^)
Posted by 一輪駆動一輪駆動 at 2020年08月19日 07:16
いたちさん
コメントをいただきありがとうございます。

過去まで遡ってくださり感無量ですよ。
ありがとうございます。
コロナ禍が始まり緊急事態宣言が出てから、
野に行けない無聊を慰めるために、
また書き始めました。

自分がニク好きなので、
表現にはついつい力が入ってしまいます(^^)
そうでしたか。
お腹が空いた、と。
ではサッポロ一番塩ラーメンでも開封しちゃいましょうかね(^^)
夏は塩。
Posted by 一輪駆動一輪駆動 at 2020年08月19日 07:20
 こんばんは、出遅れました(汗)。

二十年程昔、仲間とのキャンプで「火起こし」をテーマにしましたが、「フェザースティック」は作ったことありません、九月のキャンプで削ってみようと思います。

あくまで私の場合ですが、肉は粗めに砥いだ刃物で切ります、ステーキ屋さんで出て来るテーブルナイフが「セレーション(波刃)」なのと同じ理由ですが、あれは砥ぐのが面倒なので・・・。

正反対のスタイルのお二人、ロマンス(死語?)に発展するんでしょうか、英太君とは不倫ルートしかありませんし・・・、続き読まなきゃ(笑)。
Posted by まろ(仮)まろ(仮) at 2020年08月19日 19:31
七私さん
コメントをいただきありがとうございます。


なるほど〜、確かに独特な用語が多いですもんね。
フェザー…なんて言われてもね。
手羽中って事か⁉︎って普通の人は思いますよね。
思うかっ!、ての(^^)
キーマン編、もうアップしてしもうたです(^^)
Posted by 一輪駆動一輪駆動 at 2020年08月19日 21:09
eco2さん
コメントをいただきありがとうございます。


この暑さの中、庭仕事は大変ですね。
塩分、水分補給をしっかりとされて楽しまれてください。


ワタクシも文化焚き付けは1/4にして使ってます(^^)
一本丸ごとは要らない(^^)
1/4で着火できますしね。


ファイアライターズとは、着火剤の先っぽにマッチ機能が付いているものですかね⁉︎


いえいえどんな方法であれ構わんのです。
対象が切れれば良しです。
Posted by 一輪駆動一輪駆動 at 2020年08月19日 21:15
SSSN3
コメントをいただきありがとうございます。


ププッ、何言っちゃってんですか(^^)
ワタクシはオジイ様ですよ。


おお、砥石でシコシコやられてるのですね。
砥ぎが上手い人は、砥石だけでコピー用紙スーッなんですがね。
ワタクシも砥石だけでは、スーッの経験ありません。
Posted by 一輪駆動一輪駆動 at 2020年08月19日 21:18
まろさん
コメントをいただきありがとうございます。


まろさんも野遊び経験、長いですものねー。
ゴム台に3Mだと革砥要らずでしょうか。
そういやステーキ屋は波刃が多い気がします。
ワタクシがよく買うスジたっぷりの肉に波刃を使ったら、
あまりにスジとケンカして、
肉が芝生に飛んでいきそうですわ(^^)


さあて如何なものでしょうか⁉︎
不倫にしちゃってもいいのですがね。
いたちさんに怒られそう(^^)
Posted by 一輪駆動一輪駆動 at 2020年08月19日 21:25
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